春を告げ、彩りと香りで心震わせる花「エアリーフローラ」
石川の風景を象徴するかのような色合いで魅了。
雪の多い石川に春の訪れを告げる花として親しまれている「エアリーフローラ」。石川県が8年もの歳月をかけて開発したフリージアの新品種で、2012年にデビューしました。ストックや葉牡丹、ケイトウなどの生産が盛んな石川県で初めてブランド化されました。
遺伝子組み換えをせず、交雑によって開発されているため、狙った色を作る難しさがあったそうですが、2012年に7色でデビューして以来、2017年に3色、2020年に1色、そして2024年に2色が新たに仲間入りし、現在は全13色が揃います。
キャッチフレーズは「旅立ちを祝う花」。やわらかな紫色で和洋折衷のさまざまなシーンで親しまれる「エアリーパープル」、能登のサクラ貝を思わせる「エアリーシェルピンク」、日本海に沈む夕日を思わせるオレンジと紫のコントラストが魅力的な「エアリーサンセット」など、石川の風景や文化を象徴するような繊細な色合いで、春の出会いと別れを鮮やかに、かつ印象的に彩ります。
藩政時代から続く花き栽培地区で育てる生産者も。
北は輪島市、南は加賀市と幅広い地域で生産されており、県内には約40人の生産者がいます。なかでも、生産者で組織する「エアリーフローラ振興会」会長の山本秀樹氏は、品評会で最高位である県知事賞をこれまでに2度受賞。加賀藩三代藩主・前田利常の命により花き栽培が盛んになったとされる金沢市花園地区で、2013年から、この花を育ててきました。
13色のなかで生産量が最も多いのが、一番早く咲く「エアリーイエロー」。色ごとに一重、八重と花の形状が異なるほか、香りも違います。白の花びらに淡い桃色がにじむ半八重の「エアリーピーチ」はスパイシーな香りが人気。花の全国大会「ジャパンフラワーセレクション」でフレグランス特別賞も受賞しています。
10月頃に球根を定植し、3月上旬から下旬にかけて収穫するのが基本。球根は夏の高温で目覚め、冬の寒さにあたることで花芽が形成されます。こうした自然のサイクルを利用した「季咲き」と、冷蔵などで開花を早める「促成栽培」の二つの方法があり、山本氏は自ら育てた球根を使い分けて栽培しています。
温度・湿度管理を徹底――作り手の優しさが花を育くむ。
冬場に育つ「エアリーフローラ」。夏場に育つ花とは異なり、害虫などの心配はあまりありませんが、温度・湿度が大きく影響するため、育成時の管理にはとりわけ気を配ると山本氏。「寒さに弱い品種なので、霜が降りる晴れた朝が一番こわいですね」。とりわけ「エアリーシルク」や「エアリーサンセット」「エアリーレッド」などの八重品種は、寒さが原因で咲かなかったり、うまく八重にならなかったりすることもあり、一重に比べていっそう気を揉むのだとか。気温が下がる夜間に不織布をかけたり、日中はしっかり日光に当てたりして寒さから守ります。
とはいえ、暖かすぎてもいけません。特に定植時に高温になると、つぼみが低い位置にできてしまい(花さがり)、品質が下がってしまうのです。近年は10月でも暖かい日が多いですが、そういう日には遮光して高温から花や茎を守り、地温が上がるのを防ぐなどの対策をとっています。
「『エアリーフローラ』の栽培を始めた1年目は、がんばって細かくたくさん植えたら収穫時に花茎が絡まって苦労しました。まだ当時は花の性質をあまりよく理解できてなかったんですよね。もちろん、今はゆとりをもって植えるようにしたらストレスなく育つようになりましたし、スムーズに収穫できるようになりました」
「特別なことをしているわけではない」と山本氏は語りますが、花の性質を理解し、生育環境を丁寧に整える――そうした基本の積み重ねこそが、美しい花を育てる秘訣なのかもしれません。
フラワーショップに入荷された頃に開花のタイミングを合わせるため、つぼみのままの状態で収穫、出荷されます。1本にいくつもつぼみがついており、順に花が開くため長く花を楽しめるのもうれしいところ。4月中旬頃まで店頭に並びます。咲く順番が異なるため、13種類すべてが一度に店先に揃うことは稀ですが、その時々の種類を少しずつ楽しむのもよいでしょう。
6年前から県内の小学校で、卒業生に一輪ずつ「エアリーフローラ」をプレゼントするというイベントも行われています。「子どもたちが花を手にして喜ぶ姿をイメージすると、今年もがんばってきれいな花を育てようと思えます」と山本氏。
淡くやさしい色、上品な香り、そして丁寧な手仕事から生まれる品質は、確実にファンを増やしています。石川の風土と人の手が育んだ「エアリーフローラ」は、冬から春へと季節をつなぐ、やわらかな光のような花。一輪挿しに一本でも絵になる佇まい、はっとするようないい香りを自宅で楽しんでみませんか。